今年一発目のレビューはエスクードの「あかときッ! -夢こそまされ恋の魔砲-」から。 「なんだかんだ言ってエスクードさんの作品、かなりやってるんだよなあ~」と、昔の作品のパッケを見返しながらレビューを書いてました。少しでも参考になれば幸いです。
評価(☆→★→◎→○→△→×)
シナリオ○
グラフィック★
エッチ×
サウンド・ボイス◎
ゲームシステム☆
声優陣のラインナップ(とくに男性陣)を見ても、軽妙なノリで所狭しと駆け回る闊達なキャラクターたちを見ても、「エスクード的」と号したいコメディタッチの空気が伝わってくる。「ふぃぎゅ@」や「メタモル」ほどの話題性には欠けるが、「遊べるゲーム年末代表」の座を射止めることには成功しており、脱衣麻雀を乗っけた感じのシステムが否応にも助平心を刺激させる。
惜しむらくは、「丁寧さの中に介在する雑さ」が今回もエスクードらしくなってしまったことで、数ある欠点の中でもことさらエロ要素を薄めていることについては、少なからず疑問符を挟む余地があるだろう。
早い話が“「メタモルファンタジー」からエロを抜いた18禁ゲーム”という、どことなく15禁の臭いすら感じさせるゲームである。「魔法少女からエロを取らないでくれ」という一部の熱狂的な方々からすれば、この作品は言語道断だと言えよう。
1周目プレイ後の印象は、「
珍妙な脱衣ゲー」。服は脱がせるのに、その流れがエッチまで届かず、陵辱色どころかエッチそのものの描写が極めて薄い。ヒロインごとのムフフな回想は1~2とあまりにも少なく、昨今のエロゲーの回想数を鑑みれば、これがいかに少ないかというのは言うまでも無い。エロ目的の購買は、はっきり言ってオススメしない。
エスクードの代表作の一つであろう「メタモルファンタジー」では、「魔女っ子倒してエッチだ、ひゃっほー!」と、まあ、我々が似非ルパン程度にはなれるくらいエロが充実していたのであるが、ちょうどそれを脱衣に様変わりさせたような流れが「あかときっ!」である。「メタモル」では潔いまでにエロという芯があったのに対し、この作品は中途半端に助平が過ぎて、その後の展開に肩透かしを食らったような感じだ。もちろん「メタモル」の主人公ハタヤマ君は歴代エロゲーの中でも特殊すぎるのであるが、それを差し引いても、「もう少しムフフな展開があっても良いじゃん」と嘆息してしまった。
たしかに助平心はくすぐられるものの、それより後が続かない。シナリオは勧善懲悪ものの王道ファンタジーで、コメディ色の強い序盤、シリアス色の強い終盤と、テンプレ殿堂入りとなって久しいありがちな展開である。しかし、どういうわけかシナリオのタイムテーブルに空白の部分が多く、物語を意図的にスキップさせている気がしてならない。真姫と一緒にお風呂に入るシーンなどは、明らかに濡れ場を想起させていながらシーンそのものを端折っており、息子ともども余計にやきもきしてしまう。
脱衣戦闘システムは少々バランスが悪い(時に、味方ユニットが後方待機で集中砲火を食らうことも。いわゆる運ゲー。)ものの、操作自体は明瞭で、一度やり方を飲み込めば楽しいことこの上ない。さらにそれに脱衣がついてくるとあって、男としては脱がしたい使命感に捉われることだろう。ただし、「味方の脱がし方は敵次第」なので、「真姫のお尻だけは拝ませてくれーーっ」とか「先輩のおぱーいさいこー」といったヒトアジ違うこだわりを持つオトナは、もはや神頼みするしかない。
それゆえに、助平心を充足させるための「ご褒美」にも似たエロシーンがないのが非常に残念なのである。私は「シリアスなシーンもパンツ丸出し」(オフィシャル)状態を求めていたわけではないが、せめて、回想に服が破れたCGくらいは乗っけてほしい。魔女っ子(魔砲っ子?)をどうこうできないのはストーリー上仕方ないにしても、ククリクを脱がせないのも痛い。
RPGがやたらエロ方面で優秀というあまり聞かない。もし、それをさらにステップアップさせることに成功していたならば、この作品はまさに「名作中の名作」になっていた。周回を重ねるのは骨が折れるのだが、それはエスクードにとってはいつものことなので諦めるしかない。
ここらへんが、エスクードの「雑な部分」なのである。「画竜点睛を欠く」と言うには眼の部分が大きすぎるにしても、この作品もあと一歩といった感が強く、それもエロとシナリオ不足という二点が明確な問題であるからして、ここらへんは次回作で改善してほしい。
―――という風なことを言いつづけて10年。
思えば「プリマヴェール」から「遊べるメーカー」に移って、「メタモル」で一定の評価を得たはずなのに、それから爆発しないのがここのメーカーの「色」というか「中堅臭さ」というか。このブランドは、革新と保守の間でせめぎあいが10年来続いていて、出てくる作品作品が成功と失敗を繰り返している気がしてならない。
「メタモル」に続くかと目されていた「ジュエルスオーシャン」では期待値を下回り、「英雄×魔王」もその失点を防げず、どうなるのか不安だった矢先に「ふぃぎゅ@」が主題歌も手伝ってヒット。しかし、「ワンダリングリペア」で作業化の様相を呈してしまい、さらに「ヴェルディア幻想曲」で小粒なイメージを定着させてしまったように思われる。「プリマヴェール」だけは独立独歩という印象を覚えていたが。
ところが、「乙女恋心プリスター」は今までのロスを取り戻すくらいの面目躍如であり、評価が「メタモル」のそれと比肩するのも頷ける。ところで、私から見るとエスクードには「隔年投手」というイメージすら抱いていた(失礼)のだが、この作品でそのイメージを打ち砕かれたと言ってもいい。だって、この作品は、上記の雑な点を除けば文句なしに面白く出来ているのだから。
システムは、上記の通り脱衣戦闘。自分の攻撃で相手にディレイ効果を与えるのを第一に、補助魔法や回復、必殺技を駆使したバトルものである。ここに脱衣要素がふんだんに盛り込まれていてやたら戦闘がエロい。服が脱げるとペナルティがつくという発想は革新的で、しかもこれが予想以上に面白く作られている。パラメーターの配分がちょっと分かりにくいが、それも慣れ次第でどうとなる程度のものである。粗を探せばもっと埃が出てくるだろうが、システムそのものは非常に優秀な部類に属すると思う。
また、萌え方面には滅法強く、グラフィックと声にはケチのつけようがない。目と耳は幸せになれそうだ。スタッフルームもサービス満点で、ユーザーにとって嬉しいおまけだと思われる。昔から変わってないエスクードらしい美点である。
また、エスクードのゲームというのはたいてい男の脇役もいい味を出すのが恒例となっており、「メタモル」の篠原さんや伊藤くん、ハタヤマの両親、「ジュエルスオーシャン」のラウル、「ワンダリングシペア」のジョニーなど、挙げればキリがない。今回も例に漏れず、森川さんの名無しのピエロといい、甘美さんのピックィークラッコといい、きっちりおいしいところを持っていっている。(最近は、森川さんと甘美さんがいてこそのエスクードという感じすらする)
ここらへんは、エスクード特有の「丁寧さ」が出ていて好感が持てる。登場するぬいぐるみが、前作のリュックウだったりラロットだったりニャイガーだったりと、ディテールの細やかさも光る。グラフィック、声、音楽に関しては、さぞ安心してプレイできることだろう。
この作品は穴が少ない分、極端にシナリオとエロの粗さが際立って仕方がない。とくに、前作よりも数を減らした濡れ場の少なさは余波を与えそうで、複数キャラクター攻略という弊害が出てきているのかもしれない。また、それと関連して、折角の優秀なゲームシステムがシナリオに足を引っ張られている気がする。
おそらく、エスクードが昔から殻を破りきれずに躓いている前轍というのはここらへんにあって、まず
「ゲームシステムが、プレイヤーに周回を刻ませるだけの強度を持ってない」 ということが第一に言える。これは、全くピットインせずにF1で勝負を挑むようなものだ。
個人的な嗜好によっては「俺は何周やってもへっちゃらだぜ」とか「好きなキャラは後に取っておくのが流儀だ」といった意見もあるのかもしれないが、どう好意的に見積もっても、1周目よりも2周目が、2周目より3周目が「面白くない」というのは、どういった作品であれ、そうなる可能性を秘めている。
さらに言うとエスクードの場合、グランドルートに行くまでが大変で、そこにたどり着くにあたって戦闘スキップを多用して片付けるのは容易い。たしかに容易いのだが…………なにかこう、もったいない気がするのだ。現状ではこの選択しかないのも楽しむためと割り切るしかないし、確かに「ダレ」もあまり生じないのであるが、やはり釈然としない。スキップ前提仕様に素直に首肯するのは、おいそれと躊躇われる。もちろん、この作品の面白さには敬意を表したいところではあるが。
ところで、ことこういった「遊べるゲーム」においては、
「シナリオとゲームシステムの関係が、“水に油”と同じになる」 事態は考え物だ。片方をつまらないと感じたら、もう片方も煩雑になるのが、この手のゲームのアキレス腱であり、AVGとは一線を画す特大の課題だろう。
単一のシステムで何周もするのは骨が折れ、どうしても後になればなるほど「ダレ」が生じてしまうのは否めない。先の「プリスター」は実際にそうだった。まともに全てのENDを見て作業感を感じるのは、ブランドにとってもユーザーにとっても不幸せである。だからこその「スキップ機能」なのだが、先述したとおり、それはちょっと思慮に欠けるのではないだろうか。
ここらへんの匙加減は非常に難しくて、試行錯誤の繰り返しなんだと思われるけど、ブランドにはあくなき挑戦を続けてもらうしかない。今後に期待したい。
一周目で全て楽しめるような作りを切望するのは無茶な要求であるけれども、この「あかときっ!」に関しては、せっかくの良質な脱衣ゲーであることからして、そのハイクオリティなグラフィックを生かしつつ、もっともっとエロエロなゲーム………たとえばの話、ハーレムルートや陵辱を加えるのも大いにアリだった。なんせ、プリマヴェールで培ったノウハウがあるはずなのだから。
今回、必要と思えるシナリオを削ってまでエロを薄めたのは明らかに失敗で、不自然な場面転換がどうしてもマズく見えてしまうのは残念極まりない。好きなキャラクターだけを攻略して満足に浸る層にとっては、グランドルートにいくまでが少々難儀する。甲乙のつけがたいゲームとなるだろう。
最後に、個人的な要望としてはFDを出してほしいと切に願う。
エロが圧倒的に足りなかったあぁぁぁッ!