のレビューを書きました。
当初はもっと長く書いていたんですが、吟味する時間が限られている中で長文になるのが文才の無さを表しているように感じます。結果的に風呂敷を畳めなくなって、短評になってしまいました。
見送りと書いていたゲームをレビューするのは、レビュアーとして感心できることじゃないですが、参考になれば幸いです。
評価(☆→★→◎→○→△→×)シナリオ△ これがネックです。レビュー参照。
グラフィック★ 若干、目に光が入ってないように見えちゃいます。好き嫌いあるかもしれません。
エッチ△ 薄いですね。もう二声。
サウンド○
ボイス★
ゲームシステム☆ AXLのコンフィグまわりは、殆ど完成しています。
まるで日記帳。○月×日の出来事が延々と続く共通ルートが何よりも空虚な一作。
このところ、右肩下がりの傾向が強いAXLの8th Project。これまでの不評作品のネックは、揃いも揃って中盤以降の盛り上がりの無さにあったが、『Dolphin Divers』も同じく、その頚木から解放されることは叶わなかったようだ。
このゲームでは、ゲーム内時間が優に一年と、この手の作品にしては割かし長めで、ともすれば、容易に間延びした印象を読者に与えかねない。各イベントには細心の注意を払い、細切れにならないようにある程度の連続性を持たせつつ、粘り強く伏線の回収をして、クオリティを高めるべきだと思う。
ところが、たとえばXというイベントは加減乗除もなく、ただ単にXという単独のイベントで独立している。とくに共通ルートでの物事は総じて時間軸内での繋がりに欠け、個々のイベントの完成度はどうあれ、順進的にも逆進的にもさほど連関していないのだ。
となると、伏線の回収に目を向けざるを得ないのだが、その回収も極めて粗雑、拙劣、大雑把に過ぎる。各キャラクターが持つ背景の深度が浅すぎるがゆえに、共通ルートの冗長さが際立ち、個別ルートはその延長線として、満足な仕事をさせてもらっていない。人物が持つ背景描写の不足は、主に八潮理帆に顕著である。彼女については、メカ好きになった理由が圧倒的に不足している。
まるで日付を飛ばしながら日記読んでいるような、共通ルートが密接に繋がらない虚しさ。そんな中で、物語が僅かにでも連鎖的に繋がっているように見受けられるのは、エルナ・シェールと八潮理帆の各個別ルートだろう。それでも悲しきかな、全体的な躍動感が足りず、クライマックスにおいてもたいして引き込まれないのだが。
とまあ、中盤以降の盛り上がりに欠けるのは、AXLでメインを張る北側・長谷川両氏のネックとなっていて、こと北側氏は登場人物の顔合わせが大変に強引な気がする。この作品に限ってなのかもしれないが、「なんとかキャラクターを引き合わせました感」が如実に感じ取れるのだ。とくに男連中の初対面時は噴飯もの。違和感ばかりが募った。
物語が締まらない原因はもうひとつある。
南の島と言えば、競争社会に生きている我々現代人の端的なユートピア。最後の楽園タヒチほどではないにしろ、辺鄙なところにある島々は、戦時を除けばいかなる情勢にあっても「安らぎの地」としての地位を求められてきた。都会で忙しなく流れる時の流れは緩やかに、そぞろな足どりはゆっくりに。どんな人々の喧騒も、海のしじまに吸い込まれるまほろばは、この世に確実に存在する。「安らぎの地」という地位はこれまでも、そしてこれからも永久不変のものであるだろう。
そんな安らぎの地というイメージの中にある海事訓練校。僕は当初、このゲームに「安息の中での緊張、日常の中の非日常」というテーマをぼんやりと感じ取っていた。そして、想像していた内容とプレイ中の感覚が、まるで逆さになっていることを痛感してしまった。
プレイ当初はまだしも、いつの間にか、海事訓練校での生活は普遍的な学園モノへと転化しており、「島での学園生活」という日常に一括りにされてしまっている。そこで描かれる日常の外側に、救難活動や密輸といった様々な非日常が展開されている構図がある。つまり、非日常だったはずの海事訓練校での生活は半ば日常と化し、主人公が非日常と向き合ってしまっているのだ。
海事訓練校という特殊な環境が形骸化して、ふと気づけばそれが日常になっている――僕はそういうマイルドな空気を欲していたわけじゃない。
………という個人的な願望はさておき、既読部分の読み飛ばしや、テキストに沿った演出などはお見事という他ない。システムは業界随一の使いやすさを誇り、エフェクト関連は常に小気味よい演出を心がけてある。老舗AXLの土台部分は、相変わらずいい仕事をしている。
エロについては「AXLならばこんなものだろう」という程度。全般的に薄い。メインどころの回想が3というのはそろそろ寂しい。ヒロインのお尻を鷲掴みにするところまで行っておきながら濡れ場まで行かない、濃厚なキス描写で止まってしまうなど、ところどころにライター自らサブヒロインを主とした横槍を入れて、エロシーンを回避するセンスには疑問が残る。何か事情があるにせよ、エロゲーをエロから遠ざけるのは感心しない。
瀬之本氏の絵は相変わらずWitch時代からの安定感がある。微妙に目が安定しすぎてきた(?)気もするが、目を細めて笑った時の表情や氏独特のコミカルな表情は、見ていて多幸感を得られること請け合いだ。ここは昔から変わっていないなあと独りごちた。
僕個人としては、北側氏の手腕にはいい加減に疑問符を付けざるを得ない。このところ、似たような失策を重ねている北側作品のアキレスは、もはや茶番劇化して久しい日常と非日常の境界の曖昧さか、はたまたその境界線の取違えにこそあるのではないか、という気がしてならない。エロがいつまで経っても微妙な上、シナリオも沈んでいるようでは、ユーザーの目が厳しくなってくるのは疑いない。
乾いた雑巾を絞っても、水は一滴たりとも滴り落ちぬ。
出涸らしで煎れても、旨いお茶は決して飲めぬ。
AXLは岐路に立たされている。ここからどう変わっていくのか。それとも、これまでに掘り下げた深い轍をまた辿るのか。
僕がAXLに求めるのは冒険に他ならない。願わくば、新たなベクトルへ挑戦してほしい。
【雑記】
◆イルカと聞いてメロン器官を思い出し、メロンから巨乳を連想したのは僕だけで十分。
◆このゲームのヒロインズは、身体的な差異があんまりないのはリリース前からの疑問点だったわけですが、プレイ前の危惧は、プレイ後のネガティブへと早変わりしました。
もう少しプレイヤーの嗜好の幅を考慮に入れてほしいものです。
◆相変わらず松田さんには癒されますね。