ようやく『暁の護衛』をプレイしました。以下、私のレビューライフにすっかり定着した、メモ的なプレビューとなります。少し筆致が粗い点があるかと思いますがご容赦ください。
◆シナリオ◆ 共通ルートも個別ルートも、コメディ調の部分は、“こんぼく”のライターである衣笠さんの良さが光っていると思います。どこまでも、ギャグに拘った掛け合いが面白いです。
キャラクターも、それぞれが独特の魅力に満ち溢れており、どこかしら尖った部分がありました。麗華はツンデレひんぬーキャラ、彩は天然ゲーム好き、萌はミステリアスな先輩、妙はアホの子(褒めている)、ツキは不思議ちゃんと、どれもいたってテンプレ指向です。なのに、「お嬢様」という地位を付与すると、途端に高尚な地位と性格との間にギャップが出てしまい、それがキャラクターの魅力を倍増させているような気がします(ツキは、お嬢様付きのメイドとして)。
しかし、物語を俯瞰してみると、こじんまりとした感じと語られなかった部分の多さに、どうにも得心がいきません。禁止区域や南条薫といった情報の裏面が、最後まで公開されていないため、展開の性急さについていけないという向きも、少なからず存在すると思います。世界観に抵触する部分の説明不足も相俟って、ヒロインの想いを差し置いてテキストが一人歩きしている印象を受けました。プレイヤーが首を傾げる未知の領域が広すぎることは一目瞭然です。一つの作品として成立するとは言いがたいシナリオだと思います。
また、奇妙なことに、このシナリオは、意図的にライターが事実を伏せていると感じてしまいました。本来ならば単一の作品の中に収めるべき情報を後まで残す意味は、やはり続編の存在によるものか、はたまたそこらへんの大人の事情というやつか。いずれにせよ、物語として完結はしていないという判を捺せるでしょう。
黒塗りされた教科書を諳んじて、物語の本質を理解するのは、土台無理な話です。今作に限って言えば、プレイヤーに“黒塗りされていない部分”を読ませることで、当の黒塗り部分を気にさせたライターの勝ちです。今回ばかりは、その力量を褒めるべきなんでしょう。意図的に構成力を貶めているという点では、賛否ありそうですが。
◆絵◆ ポプリクラブの表紙を手がけるトモセシュンサク氏。少し前までは陵辱というイメージがありましたが、今作では非常に可愛らしい絵をお描きになってます。麗華からは、凛々しさが伝わってきてGood。 各キャラクターに対し、有無を言わせぬ存在感を与えていると思います。
下に書くエッチの項で指摘しますが、残念なことに、CGの使われ方が悪い意味で贅沢すぎます。それと、あんまり注目されていないOPが、あるいは難点かもしれません。素材の少なさを容易に想像でき、少々粗削りといった感を拭いきれていません。
◆エッチ◆ エッチシーン一つ一つの尺が短く、絵の魅力を十分に伝えきれていないのが残念。
各ヒロインの2回目のエッチシーンは、AパートもしくはBパートという選択肢によって分けられているのですが、いずれの濡れ場も、エンディングへの橋頭堡に過ぎません。また、シーンを選択できるとは言え、そもそもの尺が短すぎるので実用的ではありません。それに、殆どのプレイヤーはAもBもいずれも選択するわけですから、ロードという話の腰を折る作業を組み込む必要は、どこにもなかったはずです。この構成には疑問を覚えました。
エッチシーンだけを檻に閉じ込めた意図を勘繰っても、何の益も生まないことは分かっています。しかし、「ご褒美エッチだけは、ちゃんと用意しておきました~」といった感を受けてしまいました。
麗華の場合ですと、事の発端が佐竹にあると明らかになる描写にて、物語は一応の盛り上がりを見せるわけですが、その後がよろしくない。いつの間にやら幕が降りて、「エッチは2パターンあるけど、どっちがいい?」と聞かれても、プレイヤーは置いてけぼりを食らうだけ。ご褒美的な意味合いでエッチを出すのは、この手の作品ではお門違いというものです。それに、当のエッチが思いのほかアッサリしており、やはりこれらをシナリオに組み込めていないのが極めて心残りでした。
◆音楽◆ 1曲1曲は印象に残りませんが、引き立て役としての役目を存分に果たしてくれていると思います。控えめな執事といったところでしょうか。
声優に関しては、違和を感じませんでした。麗華役の大波さんが巧い。麗華のイメージ通りでした。
◆総評◆ いかにも玄人受けしなさそうな作品です。最初からハイテンションのまま進み、思わず拍子抜けしてしまうほどのあっけない幕切れ。あたかも、盛り上がりが全くないストーリーを読まされた錯覚を覚えてしまいます。そんな中で、題材の良さとギャグセンスは健在でした。
今でこそ、全てが完結してみないとなんとも言えない内容ですが、このゲームのみで一つの作品の評価をつけるとしたら、完成には程遠いと言わざるを得ない内容でした。しかし、ライターが企図してこういう構成にしたのであれば、話はまた別です。一連の物語が完結した時、作品の魅力は相当高くなるのではないか、という期待を寄せてしまいます。
私としては、一作品として見るよりも、三位一体の作品としての真価を問うてみたいところですね。
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