のうちの「DOUBLE」のレビューです。
「DOUBLE」単体の画像がアマゾンになかったので、ダブルパックの画像を拝借・・・するほど古い作品ということです。
【パッケージスペック】 ・キャラメル箱 ・CD4枚組(ディスクレスは不可です) ・マニュアル1冊 評価(☆→★→◎→○→△→×) シナリオ○ グラフィック★ エッチ○ サウンド◎ ボイス△ ゲームシステム○ 発売から10余年、時の流れと共に戦闘システムは古拙さを露わにし、シナリオは幾多の作品の下に埋もれ、コンフィグまわりでさえも、さほど秀でた存在ではなくなってしまった。だがそれゆえに、本作品は、ちぇりーそふとの確固たる代表作の一つとして認知されるべきだと思う。 10年以上も前のゲームですから、そうやすやすと手に入れることも叶わなくなってきました。今となっては本作品単体を入手するのは難しく、「鬼門妖異譚+DOUBLE」パックを手に取る人も減ったように思います。
CD版はディスク4枚組。スタジオエゴ然とした太めのキャラメル箱からは、一昔前に流行ったエロゲーの匂いがぷんぷんと漂います。
動作環境は、windowsの95,98、2000までと明記されていますが、XPでも問題なく動作しました。一応、ご報告をば。
おっと、雑談はここまで。レビューに移りたいと思います。思い出は美化されるので、たった今、あらためてプレイしてみた上での感想です。
ざっくばらんに言って、古典的名作と言える域に達していると思います。レトロな感じのするSRPGとオーソドックスなAVGを軸に、物語は12の章で構成されています。これら二つのパートを交互にこなしつつ、ストーリーが展開されていきます。
SRPGパートの出来はいまひとつ。スパ●ボ風のターン性バトルそのままに、さらに、それを簡略化したものを想像してもらえると助かります。
・・・・・そうですね、私がこのレビューを書いている時点で、発売からはや10年の時を経ています。それゆえ、いまプレイすると、いわゆる思い出補正を受けやすい作品と化しているのは明らかです。この古めかしさ(悪く言えばチープさ)は、到底隠し通せるものではありません。
さて、本編では難易度をイージーかハードに自由に選択できるのですが、なぜノーマルがないのか、理解に苦しむ仕様です。イージーにすれば、レベル上げをする必要がなく、サクサクと読み進むことができ、ラスボスでさえも、たちどころに打ちのめしてしまいます。まったく張り合いがありません。
かと言ってハードにすれば、レベル上げの段階で躓くこともしばしば。序盤の敵が強すぎて、とてももどかしい思いをします。
ここらへんの匙加減は、発売が2001年ということもあってか、かなり大味という印象を受けました。若干、操作性にも難がありますが、慣れればどうと言うことはありません。
今でもなんとか実用に耐えうるレベル・・・・・といったところでしょうか。二周目からは戦闘もスキップできます。ただし、たとえ発売当時でも、戦闘スキップを駆使せずにリトライできる代物じゃないですね。この機能は、完備して正解だと思いました。
敵のレベルは、こちらのレベルの平均が上がる度に上がっていく様子。主人公とヒロイン(1周目はアリス)を強くしていたら、他のメンバーが追いつかなくなり、容易に戦闘に出せなくなりました。プレイヤーの理解度によって、若干、選択した難易度に誤差が生じることでしょう。
時代と共に取り残された本作品の戦略性は、砂時計の砂と時間の関係と同様に、既に評価が限りなく落ちきってしまったと言えましょう。これ以上、急激に下がる事は考えにくいものの、かと言って、評価が上がるような椿事も、また起こりえないと思います。
お世辞にも当時の評価が高かったとは、忍びがたい完成度でした。大盛ペヤ●グのように、ボリュームだけはバツグンなんですけどね。
なお、登場するキャラクターとの合体技は必見です。最低でも、各キャラ一度は見ておきたいところです。
この時期としては珍しく、レベル上げのステージとして、100階層ものダンジョンが用意されているのは好ポイント。しかも、ここに数枚のCGが隠されているのですから、ステージクリア→ご褒美CGという古き善き(悪しき?)時代の名残とともに、やりこみプレイの魅力もそこに垣間見えます。贅沢を言えば、単調に過ぎるので、数フロアごとにボスを設けて欲しかったところです。
それにしても、その場に居合わせていないキャラを戦闘で使用できるのはおかしい……まあ、ちぇりーそふとだし、別にいいか。10年も前だし、別にいいか。
シナリオはタイトルどおり表裏一体。表と裏の二つの言い分をきちんと聞けるシナリオ構成で、これはなかなかお目にかかれるものではありません。勧善懲悪ものにて表裏双方の正義を描いたこと・・・・それ自体は評価して然るべきと感じます。テキスト量が多くなった影響か、ところどころ襤褸がでていますが、なんとか破綻させずに描ききっている点は、薄氷を踏み越えたも同義で、体感的に褒めちぎりたいところ。
ただ、皮肉な事にエンディングを数多く作りすぎている感は否めません。それぞれの話が形骸化しており、コアたる物語の判別がつかないのです。どれが正しい話でどれが間違っている話という以前に、そもそも、この物語には幹の部分がまったく見当たらない。心に残りにくい内容になってしまっています。純愛3Pにも議論がありそうです。
プロット自体は非常に重厚なつくりを思わせるものの、物語における分岐の多さが災いしています。薄く切ったパンのようなペラペラ具合になってしまっては、全体的に薄く見えるのも無理のないことではないでしょうか。
コンフィグは周回を重ねることを前提としているせいか、そこかしこに配慮の行き届いた設計となっています。
・未読であっても設定でスキップ可にする機能
・スキップ機能そのものの快適さ
・2周目以降の戦闘のスキップ
・今ではほぼ絶滅したであろう「ヒント」機能
などなど、いまでも実用に耐えうるつくりです。均一化が進んだエロゲのコンフィグですが、本作品は、一歩先に進んだ独自のユーザビリティを有していたように案じられます。
また、当時としては物珍しい「スペシャルスタート」機能を備えていた点も見逃せません。これは、戯画がバルドシリーズで多用するシナリオチャートと似て、任意の章からのスタートが可能という代物です。これがあるとないとでは、プレイ中のストレスが大いに抑制されるのは言うまでもありません。部分的にではありますが、今に通じる仕事をやってのけています。拍手。
さて、講評はエロの方へ。もう少し続きますがご容赦ください。
「2001年のエロゲーにしては」、という前置きをつけておきますが、エロシーンの絶対数は昨今のエロゲーと比べても遜色ありません。実に30シーン強も取り揃えてあり、プレイも純愛から鬼畜まで多岐に渡ります。シチュエーションにおいても、「二穴二本挿し」ではなく「一穴二本挿し」という、なかなかアブノーマルなエロまで取扱っている際物です。
しかし、エロゲーにおけるエロも、嗜好が時とともに移り変わりました。その間、文章にしろ、ボイスにしろ、技術的な向上があったのは紛れも無い事実です。そこを鑑みれば、
・絶対数の多さから来る各エロシーンの尺が短い点
・精液描写がかなり薄い点
・エロシーンのテキスト自体がさほど濃密でない点
・声に物足りなさを感じる点
などがネガティブな要素として挙げられ、実用品として見るには、やや厳しい内容だと言わざるを得ません。それ以前に、「UNBALANCE」や「EXILE BLOOD ROYAL II」といった他のちぇりーそふと作品のエロのほうが、本作品よりも優れていることも相俟って、思った以上に、本作品のエロに対する評価は敷居が高くなってしまってます。
とは言え、主人公以外は男も含めてほぼフルボイスという豪華な仕様です。エロゲー全般に対する声優さんの能力的、技術的なレベルが今ほど高くないことを考慮すれば、耳がちょっと寂しく聞こえるのはご愛嬌といったところでしょうか。ボイスに関しては、目を瞑りたいところですが、なかなかそれも出来難いものがありましたけど。
原画はあきら女史とタカーキ氏。ちぇりーそふとの全作品で原画を担当した、あきら女史の美麗なCGが目を惹きます。
美人という二文字が相応しい女性陣と、優男・イケメンという表現がしっくりくる男性陣が特徴的。昨今の萌えからは一線を画す、中性的な画風と言って差し支えないと思います。一目見て、その人と分かるインパクトは今も健在。僕の中では、純愛、鬼畜を問わずイケる原画家という印象を、強く持つに至りました。
女学生Aや研究員Bといった、モブキャラクターの立ち絵まで用意しているあたりが心憎い。並々ならぬ作品愛を感じ取れます。ただ、男キャラクターはどちらかというと苦手のご様子。女キャラクターを描いた方が、映えていた原画家さんだと思います。ちぇりーそふとが現存しないのは誠に惜しいところです。
そのちぇりーそふと固有のキャラクターが多数登場するため、他の作品をプレイした事があれば、思い入れが深まること請け合い・・・・・・・あ、忘れていましたが、主人公のデフォルトネーム「早瀬純」は、昔ながらの変更可仕様です。文脈では「純」と表記していながらも、登場人物は主人公のことを「彼」とか「アイツ」とか呼ぶので、久々にむずがゆい気持ちになりました。分かる人には分かるはず・・。
それにしても、ちぇりーそふとの主人公というのは、なぜデフォルトネームが必ず「純」なのか。別の作品でカタカナになっても、純はジュンです。何らかの意図があってのことだと思いますが、これは詳しくは分かりません。
そう、思い出したついでにもう一つ。
本作品は、声優の柚木かなめさんの事実上の処女作でもあります。幸運にも「同棲ラブラブル」(三枝奈々子役)をプレイした直後にそのお声を聴いて、その努力と研鑽の跡に、素人耳ながら感心させられました。濡れ場の演技に、天と地ほどの差がありました。なんだか面映い気持ちすらします。
色々と脱線しつつ、話を進めてまいりました。長々とお付き合いいただきありがとうございます。
いずれにせよ、本作品はちぇりーそふとの代表作の一つとして語り継がれてもよいレベルの作品だと思わされました。決してクレバーな出来とは言いがたいんですが、凌辱と純愛を兼ね合わせた多岐に渡るエンディングや、やりこみ要素のあるSRPG、色褪せないコンフィグまわりなど、ちぇりーそふと諸作品では随一の出来と言って、まず間違いないように思います。
こんな作品を語り継ぐ事ができれば、エロゲプレイヤー冥利に尽きます。
【再び雑記】
「印旛沼」や「仁右衛門島」という地名を章ごとのタイトルに用いたエロゲーは、後にも先にもこれだけだと思います。作中のいたるところに、千葉県(作中では千葉府ですが)の地名が登場し、いたるところに南総、房州愛が見受けられました。
近未来的でありながら、自動車や漁師町などの描写から、どこかレトロな感じも受けました。世界観が歪んでいる気もしますね。
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