2011年4月の月末商戦から、Astronautsの「デモニオン」のレビューです。「ものべの」、「俺の彼女のウラオモテ」「創刻のアテリアル」、「花散る都と竜の巫女」をプレイ中、ないしプレイ済み。そんな中で一番早く書きあげたのが「デモニオン」でした。
評価(☆→★→◎→○→△→×)シナリオ○ オーソドックスです。悪くはないのですが、如何せん地味な印象は拭えません。
グラフィック★ M&M氏は好みが分かれると思います。
エッチ★ 陵辱、堕落がメインテーマ
サウンド○ 重視すべき点ではないでしょう。
ボイス★
ゲームシステム◎改善の余地はまだまだあると思います
周回衛星かぐやから飛び立った宇宙飛行士の初仕事。実に大きな仕事をやってのけているものの、当の本人は周回が苦手だったようだ。
原画に濃密なエロで定評のあるM&M氏を迎え、氏のダークかつシリアスな路線はそのままに、遊び心までくすぐられる予告内容が目を惹く。しかも堂々の3タイトル同時発表とあっては、期待するなと言うのが土台無理な話というものだ。
そういうわけで、Astronautsは発売前から僕の度肝を抜いてくれたわけだが、そのニュース性の強さに違わぬ実力を発揮してきた。率直に言って面白いのである。こういう作品をパッと出せるブランドは貴重ではないだろうか。
ゲームシステムの近似から、「第二の巣作りドラゴン」と目されがちな本作。巣作りに近しいと言うよりも、「ダンジョンキーパー」や「Zombie Vital」、あるいは「Dungeons」に近しいと言うほうが、一部のプレイヤーにとってはしっくりくるかもしれない。
正方形の部屋を自在に組み合わせつつ、モンスターや罠をそこここに配し、冒険者を呼び寄せて力を誇示するという内容は、まさに「Zombie Vital」さながら。惜しむらくは、デモニオンに「ダンジョンの高低差」の発想がない上、冒険者が絶対に逃げ帰らないことか。本当に些細なことなのだが、この有無によって面白いと感じる時間が失われている気がしてならない。
さて、基本的には、魔王は2つの行動でもって王国を侵略していく。1つは、みずからのダンジョン内で冒険者を撃退して力を蓄える防衛パート。もう1つは、(ほぼ一本道ではあるが)街や砦に侵攻して王国を徐々に征服する侵攻パート。最終的に制限ターン以内に王国を蹂躙すれば、めでたくエンディングを迎えることができる(例外はあるが)。
この2つの行動のうち、プレイヤーが楽しめるのは主に前者のほうだろう。プレイヤーは魔王というダンジョンマスターの写し身となり、冒険者たちを待ちうけ、その中で捕らえた捕虜(ヒロイン)とムフフできるのだ。18禁お約束のピカレスクファンタジーである。魔王でありながら、こちらからの侵略は随分と地味だ。
エロ周りに関しては言うまでもなく優秀で、シーン一つ一つをとっても尺が長いのが特長。シーン毎のCG枚数の少なさを、テキストでうまくカバーしている印象を受けた。また、陵辱や堕落を主たるテーマとするため、そこそこハードなシチュエーションが目に付いた。巣作りドラゴンよりもプレイヤーを選ぶものの、かぐやの魂は継承しているとみていいだろう。
ゲームシステムはいたってシンプルなタワーディフェンス系。ユニットを配置して敵冒険者を迎え撃ちつつも、奪った資金で迷宮を拡張したり、ユニットを強化したりと、箱庭ゲームの要素も包含している。それなりに歯ごたえのある仕様だ。ただし、プレイヤーとしてできることと言えば、ユニットを撤退させたり、壊された罠を再配置したり、拡張によって崩れた迷宮レイアウトを模様替えするくらいのもの。この作業が徐々に単調に感じられる頃に、ヒロインを上手く捕獲できているかが満足度の鍵となる。
防衛パートで侵攻してくるヒロインには、それぞれに捕獲条件が付与されており、まかり間違うと誰も捕まえることができないうちにエンディングを迎えてしまう。そうなると、もはやエロゲーではなくなってしまうのが辛いところだ。
また、前述した高低差……具体的には階段の上り下りがないのが極めて惜しい。地下迷宮とは言え、デモニオンにはタテとヨコの概念しかなく、部屋も全てが正方形なため、どうしてもダンジョンがベタっとした感じになってしまう。冒険者を下の階層に引きずりこんだり、モンスタールーム(これはトルネコだが)のような身の毛もよだつトラップに引っかけることができないため、地道なシムという印象が最後まで拭えなかった。
もし、ピットがとんでもなく下の階層に通じていたら………、入った部屋のトラップで石化してしまったら………なんて、一昔前のゲームでよく見られた捻くれた罠が設置できたらという願望は欲張りかもしれない。しかしだ、一例として階段がない点を鑑みれば、ダンジョン構築の面白さをみずから狭めている気がしてならないのである。シンプルなのはいいことではあるが、如何せんこのゲームシステムでは、作業色が濃くなるのがあまりにも早すぎる。
となると、時間の経過とともに飽きやすくなるのは必定で、中毒性を意識する前にプレイヤーは投げてしまいがちだ。
また、冒険者や兵隊が闇雲に攻めてくるという点も違和感が残る。玉砕必至というシナリオでもないのに、逃げるそぶりをまったく見せないのだ、この猪突猛進の兵隊は。ここらへんは個人的な意識の問題に過ぎないけれど、もっと練りこむことはできたはずだ。
この作品は、巣作りよりもゲーム性および中毒性の高さという点で劣ってはいる。とは言え、エロ周りでは巣作りを遥かに凌駕しているのは確実だ。総合的には、こちらの方が「エロゲーらしいエロゲー」と評することができるだろう。
ところで、この作品がブランド処女作という点は見落としてはなるまい。物凄いロケットスタートを切ったブランドという認識だ。今後の展開に、今以上に関心を寄せていきたい。